研究概要 |
【目的】 中国人小児の口腔内における歯周病原性細菌の存在の有無を調査するために,Porphyromonas gingivalis (P.g.)とActinobacillus actinomycetemcomitans (A.a.)を対象としてPCR法によるこの2菌種の検出を試みた. 【方法】 対象は7歳から12歳の中国人小児154名(男子71名,女子83名)である.これらの小児をI群(7歳から8歳),II群(9歳から10歳),III群(11歳から12歳)と3つのグループに分けた.被検部位は上顎右側第一大臼歯(UR6)および上顎右側中切歯(UR1)とした.臨床診査として,Probing Depth (PD),Gingival Index (GI)について行った.細菌学的検査として,P.gingivalisとA.actinomycetemcomitansに特異的なPCRプライマーを作製し,これらのプライマーと被検部位から得られるDNAサンプルとPCR反応させた.得られた増幅断片は,アガロース電気泳動で分離後,エチジウムブロマイド染色により,これら2菌種の存在を確認した. 【結果】 UR6においてPD3mm以上の割合は年齢の増加と伴に増え,III群では約75%であった.UR1では,I, II, III群でPD3mm以上の割合は30%から49%であった.また,UR6において,GIスコア2以上のものの割合は,年齢の増加に従い増え,中等度の歯肉炎を呈するものが多かった.UR1では,GIスコア2以上のものの割合は,年齢の増加に従い増えているが,その割合は20%から34%であった. UR6において、P.g.が検出した割合は全体の19.7%(28名)であったが,このうちPD3mm以上のものの割合は79%であった.また,GIスコア2以上のものの割合は54%であった.UR1において,P.g.が検出した8.3%(12名)のうちPD3mm以上のものの割合は42%であった.また,GIスコア2以上の割合は,42%であった.UR6において,A.a.の検出した割合は全体では6.3%(9名)であったが,このうちPD3mm以上のものの割合は89%であった.また,GIスコア2以上のものの割合は56%であった.UR1において,A.a.が検出した2.1%(3名)のすべてがPD3mm以上であり,GIスコアも2以上であった.今回の調査では,歯周疾患を評価する上で,臨床診査に加えPCR法などを応用した細菌学的検査を行うことは重要であると考える.
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