日本赤十字社某健康管理センターの受診者413名について、歯周病検診の検診結果と質問紙票による喫煙量の調査結果ならびにHPLCによる血中のコチニン量を定量した結果のそれぞれの関係について調べた。その結果、質問紙票による喫煙量ならびにHPLCで定量したコチニン量と歯周病の進行度に有意な相関を認め、喫煙が歯周炎の進行に影響を及ぼしていることが明らかとなった。一方、質問紙票による調査では喫煙量が一日に20本以上あるにも拘わらず、血液中のコチニン量が高値とならない者では、歯周病の進行が進んでいる傾向にあった。すなわち、体内に摂取されたニコチンがコチニンへ代謝される効率の低い者では、体内にニコチンが長時間残留することが考えられる。したがって、このようなニコチンの代謝能が低下している者では、一端体内に取り込まれたニコチンが解毒されることなく、その毒性が持続的に作用することで、歯周病の進行が進んでいる可能性が示唆された。しかし、今回の調査群の中では、このような特異な頃向を示す者がわずか3名と極めて少なく、統計学的に有意な関係を示すことはできなかった。今後さらに被験者を増やして調べることで、ニコチンの代謝能の低下が歯周組織に及ぼす影響が統計学にも明らかになることが期待される。また、ニコチンの代謝能の低下した者の全身的な健康状態についても、今回の調査群だけでは特に傾向を掴むことはできなかったが、被験者を増やすことで、全身の健康とニコチン代謝能の関係を明らかにすることが可能になると思われる。
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