研究概要 |
平成13年度 ニコチンの代謝産物であるコチニンの唾液中濃度を測定して、喫煙者と非喫煙者における歯周疾患の病態と唾液中潜血反応試験結果の関係を比較検討した。その結果、喫煙群では歯周炎が振興していても唾液潜血反応試験が陰性のものが多く,唾液中のコチニン濃度が高い群で歯周炎が重篤化する傾向が認められた。また、歯周炎が進行した群では唾液潜血反応試験結果と唾液中のコチニン濃度の間に有意な逆相関が認められ,唾液中コチニン濃度の上昇に伴って唾液潜血量が低下していた。 平成14年度 体液中のコチニンならびにニコチンの定量法として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法の開発を目指した。カラムならびに移動相を様々に変化させて、いろいろな溶出条件を用いてニコチンとコチニンが同時にかつ高感度に検出できる条件を検索した結果、それぞれを94〜2350ng/mlおよび122〜3,050ng/mlの範囲で直線的な定量性が得られる方法が開発できた。 しかし、唾液成分にはコチニンのピークに重なる物質が混在していることから、唾液を検体とする方法では、本検査が良好でなかった。そこで、検体を血清としたところ、コチニンおよびニコチンの定量を妨害するピークが認められず、分析が良好に行えることが確認できた。 平成15年度 某健康管理センターの受信者413名について、歯周病検診の検診結果と質問紙票による喫煙量の調査結果ならびにHPLCによる血液中コチニン量の定量結果のそれぞれの関係について調べた。その結果、質問紙票による喫煙量ならびにHPLCで定量したコチニン量と歯周病の進行度に有意な相関を認めた。一方、質問紙票による調査では喫煙量が多量であるにも拘わらず、血液中コチニン量が高値とならない者で、歯周病の進行が進んでいる傾向にあった。すなわち、ニコチンの代謝能が低下している者では、その毒性が持続的に作用することで、歯周病の進行が進んでいる可能性が示唆された。
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