研究概要 |
骨代謝に関与する遺伝子として、遺伝子多型によるオステオカルシンレベルの差および骨密度への関与が報告されている活性型Vitamin D receptor(VDR)の遺伝子型と歯周炎との関連性を検索するため、以下の対象群よりインフォームドコンセントを得て末梢血を採取した。すなわち広汎型侵襲性歯周炎患者(GAP)42名、慢性歯周炎患者(CP)52名、健常者(HC)55名である。これらのゲノムDNAについてVDR-B-b多型を制限酵素BsmIによる切断法にてタイピングした。また、他の遺伝子型と組み合わせた場合の歯周炎への関与を検索するため、IgG受容体FcyRIIIb-NA1-NA2の遺伝子型タイピングをアレル特異的PCRにて行った。 その結果各群間でVDR-B-b遺伝子型分布に有意な偏りは認められなかった。一方、FcγRIIIb-NAl-NA2遺伝子型については従来の報告と同様、GAP群ではCP、HC群いずれと比べてもNA2保有者が有意に多かった。これらの組み合わせについて解析すると、GAP群においてはVDR-Bアレル非保有者中、FcγRIIIb-NA2保有者の割合がCP,およびHC群に比較し有意に高かった。この場合NA2保有者のOddsは単独では3.87だが、VDR-Bアレル非保有と組み合わせると5.93へと上昇した(GAP vs HC)。さらに対象を非喫煙者に限定するとOddsの上昇は6.14から12.24へと拡大した。結論として,VDR遺伝子型とGAPに相関性は認められないが、VDR-FcγRIIIb遺伝子型コンビネーションはGAPの感受性に関与すると考えられる。 以上を第79回・国際歯科医学研究会総会(千葉、2001年6月29日)にて口頭発表し論文をJournal of Dental Researchに投稿、80巻12号において掲載され、当号における特に重要な論文として選ばれた。
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