研究概要 |
今年度は,歯周炎の動脈硬化症への関与を明らかにするため,炎症性サイトカインおよび歯周病原細菌成分のヒト冠状動脈血管内皮細胞に及ぼす影響について検索した。ヒト冠状動脈由来血管内皮細胞をTNF-α,IL-1β(0-lOng/ml),Porphyromonas gingivalis (P.gingivalis)およびEscherichia coli (E.Coli)-LPS(0-5μg/ml)で刺激し24時間培養後intercellular adhesion molecule (ICAM)-1,vascular cell adhesion molecule (VCAM)-1の発現をCell-ELISAにて測定した。また,培養上清中のIL-6およびMCP-1産生量をELISAにて測定した。その結果、TNF-αおよびIL-1β刺激の濃度依存的にICAM-1,VCAM-1発現の上昇が認められた。P.gingivalisおよびE.coli-LPS刺激の濃度依存的にICAM-1発現の上昇が認められたが,P.gingivalis-LPS刺激の影響はE.coliに比べると低かった。VCAM-1発現に関してE.coli-LPS刺激の濃度依存的に発現上昇が認められたが,P.gingivalis-LPS刺激による影響は認めら1れなかった。TNF-αおよびIL-1β刺激の濃度依存的にIL-6,MCP-1産生の増加が認められた。特にIL-1β刺激はIL-6産生に対して顕著な影響を与えた。炎症性サイトカインは血管内皮細胞の接着分子発現およびサイトカイン・ケモカイン産生に対し著明な影響を及ぼし,P.gingivalis-LPS刺激においてもその影響が認められたことから歯周組織における感染が全身の炎症状態に影響を与え,血管内皮への傷害とそれに続く動脈硬化に関与する可能性が示唆された。
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