研究概要 |
薬物性歯肉増殖症を惹起することが知られているCa拮抗剤系降圧剤ニフェジピンによって培養歯肉線維芽細胞のライソゾーム酵素カテプシン-L活性が著明に低下することを明らかにした。また、この活性低下は遺伝子の転写レベルでもたらされること、すなわちニフェジピンがカテプシン-L遺伝子の発現を抑制することを明らかにした。この結果と申請者らが以前、明らかにした他の原因薬剤(抗てんかん薬フェニトイン、免疫抑制剤サイクロスポリン)もカテプシン-Lの酵素活性を遺伝子の転写を抑制することで結果的に低下させる(Yamada H et al.,J Periodontol,2000)とした結果をふまえ、カテプシン-Lのcomplete loss of functionに伴うマウス表現型を検討した。カテプシン-L遺伝子欠損マウスでは歯肉が肥厚し、その程度はサイクロスポリンによってマウス歯肉に誘導される実験的歯肉増殖症(Asahara Y et al.,J Periodontol,2000)の肥厚の程度と同程度であった。さらにカテプシン-L欠損マウスの肥厚歯肉組織を組織学的に検討したところ、肥厚組織は上皮組織ならびに上皮下結合組織のいずれもが肥厚していること、上皮脚が結合組織内深部に進展していることが明らかとなった。すなわち本組織像はヒトにおける薬物性歯肉増殖症の組織像に極めて類似したものであった。 以上の結果から、カテプシン-Lの活性低下によってマウスにおいてヒト歯肉増殖症類似の病変が惹起されること、薬物性歯肉増殖症の発症にカテプシン-Lの活性低下が関与する可能性があることを明らかにした。
|