研究概要 |
カルボランはフラーレンC_<60>と同様の球状の形状を有するが、分子表面の性状はC_<60>電子豊富であるのに対して、完全に疎水的である分子構造上、興味ある化合物である。カルボランは分子認識の面で複合分子形成のゲスト分子あるいはホスト分子の構造単位としての可能性を有する。本研究では、カルボランの電子的・立体的性質と炭素置換位置異性体構造を利用した超分子形成を含む機能性分子構築を目指し、本年度の研究により以下のような成果を得た。 1)o-カルボラン骨格はアルキンヘのデカボラン(B_<10>H_<14>)、の付加反応により容易に合成できる。この反応を利用して、平面的な環状芳香族アルキン(1,3,5-trisphenylethynylbenzene)を一気に構造変換して立体的な分子構築とする合成と構造解析を行い、3つの末端フェニル基が同一方向を向く特異的な構造を得た。これは、芳香環の相互作用によると考えられ、更なる分子設計の基盤となる。また、末端にベンジル基3つを有する同様の化合物でも、末端フェニル基が同一方向を向き、2分子が相対して疎水空間を形成し、そこに溶媒が取込まれた構造が得られた。 2)カルボランの機能性分子への応用として、p^-カルボラン骨格とベンゼン環、そしてエステルを組み合わせた直線的形状の分子数種を設計合成し、その構造と性質を解析した。これらの分子はある温度範囲においてネマティック液晶としての性質を示した。
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