ホウ素クラスターの電子効果及び立体特性の解明と機能性分子構築への応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470468
• 研究機関: 東北薬科大学
• 研究代表者: 遠藤 泰之 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (80126002)
• 研究分担者: 太田 公規 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (90347906) ; 猪股 浩平 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (60221785)
• キーワード: ホウ素クラスター / カルボラン / 立体分子構築 / 機能性分子 / 液晶 / 受容体 / 疎水性相互

研究概要

カルボランはフラーレンC_<60>と同様の球状の形状を有するが、分子表面の性状はC_<60>電子豊富であるのに対して、完全に疎水的である分子構造上、興味ある化合物である。カルボランは分子認識の面で複合分子形成のゲスト分子あるいはホスト分子の構造単位としての可能性を有する。本研究では、カルボランの電子的・立体的性質と炭素置換位置異性体構造を利用した超分子形成を含む機能性分子構築を目指し、本年度の研究により以下のような成果を得た。
1)前年度のp-カルボラン骨格とベンゼン環、そしてエステルを組み合わせた直線的形状分子がネマティック液晶としての性質を示したことを応用し、リンカーにエステル、イミン、-CH=CH-、-CH_2CH_2-、末端アルキル、アルコキシの炭素数を替えたもの数十種類を合成し、カルボラン環の効果をベンゼン環、2,2,2-bicyclooctaneと比較して、その特性を明らかにした。
2)機能性分子への応用を受容体の疎水性構造に親和性をもつ球状疎水性として医薬化学に展開し、核内受容体リガンドの設計、合成を行い、強力な活性を有するレチノイド、エストロゲンを得ている。リガンドー受容体の形状認識に関するカルボランの情報を得る目的で簡便なドッキングシミュレーション法を開発した。
3)カルボランの疎水性を医薬化学を始めとする応用領域に展開することを目的として、カルボラン位置異性体の疎水性の定量的評価を行い、疎水性置換基定数を確立した。また、この値を用いてエストロゲン活性との定量的構造活性相関を行った。

研究成果

• [文献書誌] Jayaseharan Johnsamuel: "A New Strategy for Molecular Modeling and Receptor-based Design of Carborane Containing Compounds"J.Organomet.Chem.. 680. 223-231 (2003)
• [文献書誌] Jayaseharan Johnsamuel: "A Convenient Method for the Computer-Aided Molecular Design of Carborane Containing Compounds"BioMed.Chem.Lett.. 13. 3213-3216 (2003)
• [文献書誌] Yasuyuki Endo: "Boron clusters for medicinal drug design : Selective estrogen receptor modulators bearing carborane"Pure Appl.Chem.. 75. 1197-1205 (2003)
• [文献書誌] Yasuyuki Endo: "Utility of Boron Clusters for Drug Design. Relation between Estrogen Receptor Binding Affinity and Hydrophobicity of Phenols Bearing Various Types of Carboranyl Groups"BioMed.Chem.Lett.. 13. 4089-4092 (2003)
• [文献書誌] Yoshiyuki Taoda: "Electronic Effects of Icosahedral Carboranes : Mechanistic Alteration in Solvolysis of a-(o-Carboranyl)benzyl Tosylates by Electronic Effect of Substituents"Tetrahedron Lett.. 44. 8177-8181 (2003)
• [文献書誌] Kiminori Ohta: "Structural Effects in Three-Ring Mesogenic Derivatives of p-Carborane and Their Hydrocarbon Analogs"Liq.Cryst.. In press. (2004)
• [文献書誌] Yasuyuki Endo: "Boron Chemistry at the Beginning of the 21th Century"Bubnov, Yu., et al.(eds.) Russian Academy of Sciences, Nauka, Moscow. 298-306 (2003)