研究概要 |
ラジカル環化反応は環状化合物の新しい有用な合成手段として近年大きな注目を集めており、天然物合成を含む有機合成の領域において現在広く用いられている.しかし,この有用なラジカル環化反応にも解決すべき多くの課題が残されている.その一つは位置化学の制御である.一般に反応を制御しがたいラジカル反応において位置化学の制御の問題が解決されればラジカル反応の有用性はさらに増大するであろう.また,ラジカルの新しい発生法の開発も望まれている.そこで申請者らは,ラジカル環化反応におけるこれらの諸問題の解決を目指すとともに,これらの成果を生理活性化合物の効率的合成法と応用することを目的として本研究を開始し,下記の研究成果知見を得た. 1)硫黄原子によって制御された5-exo選択的アリールラジカルを利用して抗ヘルペスウイルス活性化合物Mappicine Ketoneの新しい合成法を明かにした.2)硫黄原子によって制御された6-exo選択的アリールラジカルを利用して鎮痛作用物質(-)-Aphanorphineの新しい合成法を明らかにした.3)2-位にフェニルチオ基またはフェニル基を有する種々のN-(1-シクロヘキセニル)-α-ハロアミド類のラジカル環化反応における5-endo及び4-exo選択性を明らかにした.4)α-アミドイルラジカルの5-endo型ラジカル環化反応を含む新しいカスケード型ラジカル環化反応を見い出した.5)N-ビニル-α-ハロアミドの5-endo型ラジカル環化反応においてヨウ素原子は脱離基として好ましくないことを明らかにした.6)α-メチルチオアセトアミドをII価の銅塩存在下酢酸マンガン(III)で処理することによりエリスリナン骨格の新しい合成法を見い出し,本反応を天然産エリスリナアルカロイド3-Demethoxyerythratidinoneの合成に応用した.
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