研究概要 |
α-位にアルキル基をもつα,β-不飽和エステル類やアミド類に反応剤である光学活性メルカプトアルコールを1,4-付加させた後、生成するエノラートに対する不斉プロトン化反応を検討した。本反応はミカエル付加反応であるが、その反応中間体である1,4-付加体が環状化合物になるため、そのプロトン化反応が立体選択的に進行した。この結果、α,β-不飽和アミド類では一般的に85%以下の選択性に止まったが、α,β-不飽和エステル類は90%以上の高い選択性で進行した。次に得られた生成物から不斉補助基(不斉鋳型)を除去するため、還元的脱硫や硫黄原子を生成物に残す変換反応を検討した。この結果、前者の反応(Raney-Niによる還元)では部分的なラセミ化が観察され、後者の変換反応(ルイス酸とチオールによる解裂反応)ではラセミ化を観察することなく目的物を得ることができた。また、本反応を用いて血圧降下剤であるカプトプリル誘導体の不斉合成を完成した。上記結果をOrganic Lettersに速報として掲載した。本研究の際に、臭いのしないチオール試薬類の開発(Tetrahedron Lettersに掲載)を検討し、α,β-不飽和エステル類に硫化水素を無臭・無毒条件下で不斉ミカエル付加させることにも成功した。 α,β-不飽和ケトン類に対しては1,4-付加させた後、不斉プロトン化反応とMPV反応を連続させ、得られた生成物から不斉補助基を除去して3連続不斉炭素を構築する反応については、現在検討中である。
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