研究概要 |
平成13年度は光学活性1,3-メルカプトアルコールを不斉反応剤として、α-位にアルキル基をもつα,β-不飽和エステルへの共役付加反応に伴う不斉プロトン化反応を検討し、得られる生成物の分解反応により硫化水素が形式的に不斉付加したβ-メルカプトエステル類の不斉合成に成功した。また上記分解反応の開発研究の際、臭いのしないチオールの開発に成功し、上記反応に適用した。平成14年度は不斉tandem [4+2] cycloaddition-elimination反応の開発とチオピラン誘導体の不斉合成、及び不斉tandem conjugate addition-protonation-MPV還元反応の開発と3連続不斉炭素をもつ1,3-メルカプトアルコールの立体選択的不斉合成を検討した。 1)不斉tandem [4+2] cycloaddition-elimination反応の開発 α,β-不飽和アルデヒドを3-メルカプト-3-メチルブタノールでモノチオアセタール化した1,3-ナキサチアンはハードなルイス酸により開環してチエニウムカチオンを生じる。このカチオンに1,1-2置換オレフィンを添加すると[4+2] cycloadditionと環外側鎖のeliminationが進行して3,4-ジヒドロ-2H-チオピランを生成することを見出した。上記の3連続反応に光学活性な無臭チオールとして(-)-8-メルカプトメントールを用いた反応を開発した(Tetrahedronに掲載)。 2)不斉tandem conjugate addition-protonation-MPV還元反応の開発 α,β-位に置換基をもつα,β-不飽和ケトンに光学活性メルカプトアルコールを反応剤としてルイス酸存在下、チオールの共役付加、不斉プロトン化、Meerwein-Ponndorf-Verley(MPV)還元の3連続反応を試みた。本反応の基質にフェニルケトン体を用いた場合の生成物は2種の立体異生体のみで、そのジアステレマー比は90~100%であった。また、脂肪族ケトンの場合は立体選択性は低くなるが、有機酸の添加により改善することができた(論文投稿中)。
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