研究概要 |
1)吸収波長の問題:高度好塩菌に存在する4種のレチナールタンパク(バクテリオロドプシン,ハロロドプシン・センソリーロドプシン,フォボロドプシン)のうち,フォボロドプシンのみがその吸収波長が約500nmにあり,他の3種は580nm付近にある.Natronobacterium pharaonisの負の走光性のレセプターであるフォボロドプシン,ppRを研究材料として,この問題を考察した.ppRとバクテリオロドプシン(bR)とはX線構造は極めて類似しているにもかかわらず,吸収波長が約80nm異なる原因を,ppRとbRのキメラタンパクを作製して検討した.その結果,数種のアミノ酸残基が関係するのではなく,広範囲なヘリクッス/ヘリクッス相互作用が吸収波長を決定していると結論した. 2)トランスジューサタンパクとの相互作用:ppRは細胞膜中でトランスジューサタンパクと相互作用をする.トランスジューサタンパクと結合すると熱安定性が増すことを利用して,種々の変異体のトフンスジューサへの結合をしらべ,どのアミノ酸残基が結合に重要かを調べた. 3)固体NMRによるダイナミクスの研究:X線結晶構造の結果では,トランスジューサと結合してもppRの構造は,単体の場合と全く変わらないことが明らかにされている.しかし,[13C]AlaまたはValでラベルした試料を用いて,固体のNMRでダイナミクスを調べると,2箇所の位置で,そのダイナミクスが変化することを明らかにした. 4)Arg-72の意義:この位置のアルギニンは,高度好塩菌のレチナールタンパクにすべて保存されており,そのため重要なアミノ酸残基であると考えられている.ppRでは,構造を保つために必要であることを明らかにした.
|