研究概要 |
ファラオニスフォボロドプシン(ppR)とは,Natronobacterium pharaonisという細菌に存在する負の走光性のセンサーであり,レチナールを発色団とする7回膜貫通ヘリクッス型タンパクである.光照射による励起により,種々の光化学中間体を経て元のppRに戻るというサイクリックな光化学反応を示し,これをホトサイクルと呼んでいる.また,ppRはpHtrIIと呼ばれているトランスジューサタンパクと膜内で複合体を作っている.本研究では,次の点を明らかにした. 1)Singular Value Decomposition法を導入して,常圧および高圧下でホトサイクルの精密化を行ない,新しい光化学中間体を発見した. 2)ppRはホトサイクル中にプロトンを放出し,また取込む.どのアミノ酸残基からプロトンが何時の時期に放出されるかを明らかにした. 3)ppRとpHtrIIの複合体の化学量論比を1:1であると決定した. 4)ppRとpHtrIIの複合体形成に必須のアミノ酸残基を同定した. 5)フォトサイクル中に,複合体の解離定数が100倍近く変化することを明らかにした. 6)高度好塩菌の膜には,4種類のレチナールタンパクが存在する.ppRの吸収波長は500nmであるが,他の3種は560〜580nmにある.例えば光プロトンポンプであるバクテリオロドプシン(bR)のそれは570nmである.一方,X線結晶解析によれば,ppRとbRの主鎖の配置は極めて似ている.bRとppRとのキメラの作製によって,この解明を行なった.
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