研究概要 |
一般に、三本鎖核酸の熱的安定性は二本鎖核酸の安定性に比べて低いことから、アンチジーン法を達成させるためには長鎖のオリゴプリン配列を標的にする必要がある.我々は,ペンタエリスリトールの4個の等価な1級水酸基の内の2個に3'→5'方向にオリゴヌクレオチドを合成し,一方をオリゴプリン鎖,他方をオリゴピリミジン鎖とする交互配列からなる架橋型オリゴヌクレオチドが,10mer程度のオリゴピリミジン鎖とオリゴプリン鎖からなる二本鎖DNAに結合し,熱的に比較的安定な三本鎖を形成することを明らかにした.今年度は,架橋部にどのようなインターカレーターを導入した場合にさらに熱的安定性を高めることが可能かを調べた.架橋部位にインターカレーターとして,ナフタレン、アントラセン、アントラキノン、アクリジンおよびピレンを導入した3'-3'末端架橋型オリゴヌクレオチドを合成した.第三鎖の50%融解温度(T_m)を熱変性法により測定し、導入したインターカレーターの三本鎖核酸熱的安定化効果を比較したところ、アントラキノンを導入したオリゴヌクレオチドが最も三本鎖核酸を熱的に安定化することが明かとなった.また、合成したオリゴヌクレオチドがin vitroにおいて、アンチジーン効果を示すこと確認するために制限酵素Hind IIIを用いた切断反応阻害実験を行った.その結果、アントラキノンを導入したオリゴヌクレオチドは、未架橋およびインターカレーターを導入していないオリゴヌクレオチドと比較してHind IIIによるDNA鎖の切断を強く阻害することが明らかとなった.
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