肝細胞胆管側膜上に発現されるmultidrug resistance associated protein2(MRP2/ABCC2)は、胆汁酸非依存的な胆汁生成に関与し、その遺伝的欠損は胆汁うっ滞・黄疸を伴うDubin-Johnson症候群の発症原因となる。一方、後天的な種々の要因により胆汁うっ滞が惹起されるが、その機構として、MRP2/ABCC2の病態刺激による内在化が考えられる。本研究では、病態時におけるMRP2/ABCC2の内在化を明らかとし、局在変動に伴う胆汁うっ滞発症という機構を提唱した。さらに、遺伝的多型変異を有するMRP2/ABCC2分子の機能について検討を加え、分子自体の機能は正常であっても、膜局在性が変動することにより病態が発症する可能性を示唆することができた。一方、肝病態時には、MRP2/ABCC2の機能を補償すべく、血管側膜にMRP3/ABCC3が発現誘導される。ここで、MRP3/ABCC3の排出機能によっても、胆汁うっ滞の病状の程度が影響を受けうることから、ヒトMRP3/ABCC3の機能について検討を加えた。そして本排出型トランスポーターが、MRP2/ABCC2基質のほか、bile salt export pump(BSEP/ABCB11)の基質となる一価胆汁酸をも基質とすることを見出し、肝還流実験の結果とあわせて、MRP3/ABCC3を胆汁うっ滞時のレスキュー蛋白として位置付けることができた。MRP3/ABCC3の誘導の程度が、胆汁うっ滞時の病態の程度に影響を与える可能性が示唆された。
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