研究概要 |
細胞内において分泌タンパク質等の輸送や選別に関わっているERGIC-53やVIP36は、内腔側に植物マメ科レクチンと相同性をもつ糖結合ドメインをもっている。昨年度、この糖認識部位の一部であるloop 1にランダムなアミノ酸を導入し、さまざまな糖結合特異性をもつVIP36,ERGIC-53を細胞内で発現させることを試みた。プラスミドの導入効率の高かったCHO細胞にこれらの改変VIP36,ERGIC-53遺伝子をトランスフェクトして、本来細胞表面には存在しない糖鎖が、改変VIP36あるいはERGIC-53により運び出される細胞株を、磁気ビーズを用いたMACSまたはフローサイトメトリーにより分取した。フローサイトメトリーを繰り返して得られたPNA陽性細胞から、最終的にクローン化し、13のクローンを得た。次に、これらのクローン細胞に発現した改変VIP36遺伝子解析を行った。種々のPNAレクチン陽性細胞クローンからmRNAを抽出し、ライブラリー作成の際に用いたVIP36遺伝子5'末端と3'末端のオリゴDNAプライマー(VIPran1,5)を使って、RT-PCR反応を行った。上記で得られた13種類のPNAレクチン陽性細胞クローンに関して、それぞれ数個のコロニーから回収したプラスミドの配列は2種類に大別できた。clone1,2,4,5,9,12,13,14,17は同じクローン(A)由来と思われ、またclone8,11,15,19も同一のクローン(B)由来であると考えられた。導入されていた改変VIP36をコードするクローン(A)の遺伝子を解析した結果は、改変したループをコードする塩基配列が、5'GACCCTGATTCTAATGGTGGTTCTTTT3'(a1)であり、予想されるアミノ酸配列は、Asp-Pro-Asp-Ser-Asn-Gly-Gly-Ser-Pheであった。この配列は、解析した51サンプル(pBluescriptの大腸菌クローン)のうち50クローンで同一であった。ところが、残る一つのプラスミドの関しては配列が異なっており、塩基配列は5'GACAGTTCTTTTAATTATGTTCATGCT3'(a2)、予想されるアミノ酸配列は、Asp-Ser-Ser-Phe-Asn-Tyr-Val-His-Alaであった。
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