研究概要 |
本年度は、カルシウムシグナル依存的に活性化される脳由来神経栄養因子(BDNF)とPACAP(Pituitary adenylate cyclase activating polypeptide)遺伝子の発現誘導機構の解析と、カルシウムシグナル応答遺伝子の検索を中心に行った。 1.カルシウムシグル応答遺伝子の検索 新たにenkephalin、galanin、PDGF(platelet derived growth factor)、VIP(vasoactive intestinal polypeptide)、secretin、glucagonなどの分泌性ポリペプチドをコードする遺伝子のCa^<2+>応答性を、マウス小脳顆粒細胞の初代培養系で検討した。その結果、唯一VIPだけが顕著なCa^<2+>応答性を示した。したがって、現在の所、BDNF, PACAP, セクレトグラニンII, PTHrP, VIP遺伝子がCa^<2+>シグナルで活性化されることが明らかとなった。今後、DNAマイクロアレイやプロテオミクスの適用で、新たな遺伝子群の検索が可能と思われる。 2.BDNF, PACAP遺伝子発現制御系の解析 BDNF遺伝子プロモーターIのCa^<2+>シグナルによる活性化には、上流-80付近に存在するCRE, USF-1, -2結合サイトが大きく関わり、実際に転写制御因子CREB, USF-1, -2の関わりが明らかとなった。また、PACAP遺伝子プロモーターでは、上流-200付近のCREを含む領域がCa^<2+>応答に関わっていることが明らかとなった。 以上の結果から、このCa^<2+>シグナル依存的な発現制御系を活性化する薬剤のスクリーニング系の設定が可能となった。
|