本年度も、アポトーシス細胞や酸化細胞が細胞表面糖鎖に依存してマクロファージにより認識される分子機構を、認識されるアポトーシス細胞表面リガンドと認識するマクロファージ表面受容体の両面から検討した。 1.アポトーシス細胞側の検討 1)生理的なアポトーシス誘導物質であるantiFas抗体を用いてアポトーシスを誘導した場合でも、アポトーシス初期にマクロファージによる糖鎖依存性認識が認められ、この糖鎖依存性認識機構はアポトーシス細胞一般に働く機構であることが示唆された。 2)CD43がクラスタリングするアポトーシスステージにおいても、CD4のクラスタリングは認められず、アポトーシスによりクラスタリングを起こす膜タンパク質と起こさない膜タンパク質があることがわかった。 2.マクロファージ表面受容体の検討 1)マクロファージ表面の受容体は、細胞内タンパク質として知られる既知タンパク質p110である可能性が示唆されたので、p110に対する抗体を作製し、マクロファージ表面における発現を蛍光抗体法およびp110の細胞表面からの分離検出により確認した。 2)p110に対する抗体は、マクロファージによるアポトーシス細胞の認識を阻害したことから、マクロファージ表面でアポトーシス細胞に対する受容体として機能していると考えられた。 3)p110のtruncated formのリコンビナントタンパク質(M284)を作製し、活性を検討した結果、(1)M284はマクロファージとアポトーシス細胞の結合を阻害すること、(2)その阻害活性はオリゴ糖鎖により阻害されること、(3)M284はアポトーシス細胞表面のCD43に結合すること、が明らかとなった。 以上の結果より、アポトーシス初期細胞を糖鎖を介して認識するマクロファージ細胞表面受容体はp110であるとの結論を得た。
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