液晶相下での特異性を示し得る不斉制御反応の探索を念頭に置き、簡単な複素五員環化合物(2-オキサゾロン、2-イミダゾロンや2-チアゾロン体)を反応素子とした不斉合成反応を引続き検討した。 1.複素五員環骨格の不斉機能化 a)多官能性化合物のキラル合成に有用な表記複素環体のブロモメトキシ化やセレノメトキシ化による不斉機能化と利用については、アミノアルコール、ジアミン、アミノチオール類の不斉合成ルートを開発するなど所期の成果をあげてほぼ終了した。 b)トリクロロアセチル基をペンダントグループとする表記複素環体のRu(II)触媒による分子内ラジカル付加反応を精査した結果、希土類金属塩の添加による顕著な加速効果を見出し、本不斉機能化手法の有用性を実証した。 等方性相下の本反応知見を踏まえ、スメクチック液晶相下での本反応系についての予備的検討を行った。ジアステレオ選択性の飛躍的な向上は認められず、液晶媒体の特異性を示すことが出来なかった。液晶媒体物質の更なる精緻な分子設計が必要と思われる。 2.屋根付き人工不斉源の触媒的合成 エナンチオ選択的脱アセチル化に基づく速度論的光学分割手法の最適化をはかった。これにより、複素環系不斉補助剤、アミノアルコール、ジアミン、アミノチオール系不斉配位子や多目的キラル合成子の入手が容易になった。 3.多分子系反応の液晶制御 トリエン体の分子内環化反応の高度液晶制御例を踏まえ、光延反応による水酸基の立体配置の反転反応やアレン類との分子間環化反応をスメクチック相下に行い、液晶媒体の特徴を示すことは出来たが、特異性のさらなる向上が今後の課題である。
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