研究概要 |
本研究は,複核鉄および白金錯体による二本鎖DNAへの酸化的DNA切断,インターカレーションによるDNAの複製阻害および特異的構造をもつDNAの認識・構造変化を目的としている. 本年度はまず複核錯体の調製を行ったので得られた結果を以下に示す. 1)複核鉄錯体について 光学活性なR-シクロヘキサンジアミンとサクシニルクロライドから誘導される複核配位子N, N -Bis-[2-(bis(pyridin-2-ylmethyl)amino)-1R,2R-cyclohexyl]succinamide, P2-R-chxn)_2Suc,を4工程を経て収率16%で合成した.次に(P2-R-chxn)_2SucとCu(BF_4)_2・6H_2Oとを水中で混合した後pH8に調整した.溶液を一旦減圧濃縮し、残渣をメタノールに溶かし室温で数日間放置すると濃青色の複核銅(II)結晶が得られた.この結晶の赤外吸収スペクトルはカルボニルに伸縮振動が1652cm^<-1>に観測され配位子の1672cm^<-1>に比べ低波数側にシフトしていることからイミドアニオンが銅に配位した錯体を形成していることが分かった.現在、X線結晶構造解析を行うため結晶化を進めている.これと平行し鉄錯体の合成も試みている. 2)複核白金錯体 ターピリジン白金(II)錯体,(terpy)Pt,をmまたはp-キシリルチオレートで架橋した複核白金(II)錯体,[1,3-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>と、[1,4-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>,を合成した。複核白金(II)錯体の濃度を変化させて水中で電子スペクトルを測定すると[1,4-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>錯体については波長320nmにおける見かけのモル吸光係数が濃度の上昇に伴って減少したため水溶液中で単量体と二量体の平衡が存在することがわかった.一方,[1,3-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>錯体については、このような現象は観測されなかった.現在,複核白金(II)錯体とDNAの相互作用をCDスペクトルを測定し,検討を行っている。
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