研究概要 |
本研究は白金および複核鉄錯体による二本鎖DNAへの酸化的切断,インタカレーションによるDNAの複製阻害および特異的構造をもつDNA認識,構造変化を目的としている. 1)複核白金錯体について 1,3-,1,4-キシリル架橋複核ターピリジン白金錯体[1,4-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>(1)および[1,3-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>(2)とCalf thymus DNAとの相互作用を吸収およびCDスペクトルにより検討した.DNA溶液に白金錯体を添加した際に観測された吸収スペクトルでは1はDNAの二本鎖が幾分解けた状態であることがわかった.しかし,CDスペクトルの変化からはDNAの構造を大きく変化させていないと考えられる.一方,2は吸収スペクトルにおいて280nmで小さな淡色効果が観測されたのに対し,CDスペクトルにおいては280nmと245nmの大きな負のピークが2の濃度の増加に伴って飽和する傾向を示した.このスペクトルにおける異常性の原因については,DNAの構造変化によるものと白金錯体の誘起CDに依存すると考えられる.これらの結果より,2では,2つのPt-terpy部分がキシリル基によって制約されその両方がDNAとのスタッキング相互作用によってDNAが特異的にねじれた構造になることがわかった. 2)複核鉄錯体について 2-(chloromethyl)pyridineと1R,2R-cyclohexsanediamineとから誘導される光学活性五座配位子1R-amino-2R-bis(2-pyridylmethyl)aminocyclohexsane(NH_2-Py_2-R-CHXN)を調製しその鉄(III)錯体を単離することができた.この鉄(II)錯体のプラスミドDNA切断能について検討中である.
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