研究概要 |
本研究は複核鉄および白金錯体による二本鎖DNAへの酸化的DNA切断、インタカレーションによるDNAの複製阻害および特異的構造をもつDNAの認識・構造変化を目的にしている。 1)複核鉄錯体 1,8-anthracenedialdhydeとN',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamineとから誘導される光学活性な複核配位子1,8-(N-anthranylmethyl)-bis(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine)(1)を合成した.その構造はNMR及び質量分析により決定した。 次に酸化的DNA切断を次に検討した。条件:空気下、pUC19プラスミドDNA0.57μgを用い、50mMトリス塩酸緩衝液中アスコルビン酸存在下1及び硫酸第一鉄(モル比1:2)を混合し37℃で1時間インキュベートした。その後エチジウムブロマイド含有1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行いデンシトメトリーでForm I,II,IIIの生成比を求めDNA切断能を評価した。1は5μMの濃度で効率よくDNAを切断することがわかった。DNA切断における時間依存性の検討からインキュベート直後からすでにForm IIIが生成していることからDNAの二本鎖が同時に切断されている可能性が高いことが示唆された。 2)複核白金錯体 1,3-,1,4-キシリル架橋複核ターピリジン白金錯体[1,4-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>(1)および[1,3-{(terpy)PtSCH_2}_2C_6H_4]^<2+>(2)の濃度を変化させて水中での電子スペクトルを測定すると、1については波長320nmにおけるみかけのモル吸光係数が濃度の上昇に伴って減少したため水溶液中において単量体と二量体の平衡状態にあると仮定し、二量化の平衡定数K_Dは7×10^2M^<-1>を得た.一方2については、1で見られたような濃度によるみかけのモル吸光係数の変化は認められなかった.このことから、この実験を行った濃度範囲では単量体あるいはある一定の集合体で存在すると考えられた.
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