研究課題/領域番号 |
13470499
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 慶一 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (90068247)
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研究分担者 |
宇都口 直樹 帝京大学, 薬学部, 助教授 (80276633)
伊藤 徳夫 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (60176352)
中西 剛 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (50303988)
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キーワード | 胎盤 / 有機スズ化合物 / アロマターゼ / トリブチルスズ / トリフェニルスズ / ヒト絨毛性ゴナドトロピン |
研究概要 |
昨年度は、ヒトの胎盤細胞に与える有機スズ化合物の影響について検討を行ったが、今年度は、ヒトの胎盤の内分泌機能に相当する齧歯類の胎盤の内分泌機能への影響について検討し、さらにin vivoにおける有機スズ化合物の胎盤への移行性についても検討を行うことで、有機スズ化合物の内分泌撹乱作用のin vitro-in vivo相関についての検討を行った。ラット胎盤細胞株であるRCHO-1細胞をトリブチルスズ(TBT)、トリフェニルスズ(TPT)を初めとする有機スズ化合物で処理し、各mRNAの発現変化について検討したところ、P450sccや3β-HSDなどのステロイド合成酵素の発現を上昇させることが明らかとなった。またコレステロールを基質に加えた際のプロゲステロン産生も亢進させた。さらに黄体からのプロゲステロン産生を亢進する胎盤性ラクトーゲンII(PLII)の発現を上昇させることが明らかとなった。PLIIは、ヒトの胎盤における絨毛性ゴナドトロピンに相当する機能を有していることから、有機スズ化合物は齧歯類においてもヒトと同様の内分泌撹乱作用を有する可能性が示唆された。 そこで次に妊娠ラットにTBTを投与し、その胎盤における各mRNAの発現についても検討を行った。その結果、in vivoにおいてもRCHO-1細胞を用いたin vitroの検討と同様の結果が得られた。さらにTBTを投与した妊娠ラットの各臓器中のTBT蓄積量について検討したところ、肝臓よりも胎盤の方が蓄積量が多いことが明らかとなり、またTBTはin vitroで作用が確認された濃度は、実際にTBTを暴露した際に胎盤に蓄積しうる濃度であることが明らかとなった。さらに、TBTは胎児にも一部移行することも明らかとなった。したがって有機スズ化合物は、胎盤の内分泌機能を撹乱し、胎児に何らかの影響を与える可能性が示唆された。
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