1.資料収集 医学教育に関する公的な提言・勧告などを国内外から広く収集した。情報源としては、書籍や新聞記事のほか、インターネット経由で種々のホームページやメーリングリストなどを利用した。世界の医学教育が転換期にあり、特に欧米を中心に医学教育の標準化の動きが見られることなど、貴重な情報が得られた。また日本では、医学教育以外の高等教育や初等中等教育においても問題解決能力を重視する方向に政策が動いている中で、その根拠や議論の経過を確認し問題点を整理することができた。基礎学力の不足やばらつき、大学に対する社会の認識、能力重視に伴う出自に対する差別など、本研究を進めるうえで重視しなければならない、教育学的あるいは社会学的な観点も得ることができた。 2.対象者の検討 岐阜大学医学教育開発研究センター藤崎和彦助教授、東京大学医学教育国際協力研究センター松村真司研究員、琉球大学医学部附属病院地域医療部武田裕子講師等、医学教育分野の研究者と、予備的な研究(仮説生成段階)の対象者選定における考え方について議論した。過去の医療体験などによって医師や医療に求めるものが大きく異なることが予想されることから、対象者をその特性によってあらかじめ区分して調査する必要があることが明らかとなった。 3.質的研究方法の検討 仮説生成型研究の方法として有用な質的研究(qualitative research)について、具体的手法を検討する目的で、同研究が盛んな英国の教科書を翻訳し出版した。また、質的研究に関する勉強会を、日本総合診療医学会の中で企画し実施した。更に、予備的な研究のひとつとして、医学教育に市民が模擬患者になって協力している活動を当事者である医学生や模擬患者がどのように評価しているかを、質的研究方法を用いて検討し、日本医学教育学会で発表した。その他、質的研究の方法論に関する論文を発表した。
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