1.研究協力者による議論と研究計画の具体化 東京大学の松村真司氏、北部東京家庭医療学センターの大野毎子氏、自治医科大学の高屋敷明由美氏と福士元春氏の研究協力者としての参加を得て、E-mailと会合(6回)により、本研究の具体的な研究目標と研究計画について継続的な検討を行なった。また、米国の医学教育研究者であり東京大学医学教育国際協力研究センターで活動したThomas Inui氏とGordon Noel氏からも、研究計画について助言を受けた。 2.参考資料の収集 先行研究に関する情報収集を試みたが、類似の研究報告や調査は見つからなかった。このことから、既存の質問項目を当研究で利用することは困難であると判断した。 3.予備調査の実施と解析 予備調査として、医学生・研修医・非医療者(計9名)を対象に、「研修医が身に付けている能力」についての認識など、医学教育に関する理解や認識を探る、半構造化面接を実施した。医学教育に関する理解や認識は多様であり、また実状と大きく異なる点が多いことが明らかとなった。 4.フォーカスグループ面接の実施と解析 上記の予備調査を元に、医学教育に関する理解や認識の多様性や実状との乖離を広く検討する目的で、フォーカスグループ面接による調査を計画し、1年目の研修医(8名)を対象に、平成15年1月18日に実施した。そこで得られた情報を解析した結果、患者はできると考えているが研修医は「できない」または「難しい」と感じていることの上位カテゴリーとして、「日常生活の指導」「他職種分野の知識・技術」「身体所見」「画像診断」「病気の全般的知識」「治療方針」が抽出された。また逆に、研修医は行っているが患者は「研修医にはできない」と考えているものとしては、「救急搬入の判断」「当直」「治療方針の決定」などが抽出された。また、患者が医学教育の内容を知らず、医学部をブラックボックスのように感じている様子も具体的に明らかとなった。
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