転写伸長因子は、遺伝子の正常な転写に必須である。すなわち、転写開始されたmRNA合成はRNAポリメラーゼIIによって正確にかつ効率よく伸長されなくてはならないが、精製されたRNAポリメラーゼの伸長活性は、in vivoの1/10であるし、遺伝子配列には転写伸長を阻害するものがある。また、DNA障害部位では転写は停止する。一方、転写伸長因子エロンガンは、癌抑制遺伝子VHLと結合するし、ELLは急性白血病において点座例が報告されている。しかしながら、転写伸長による制御機構や疾患との関係については不明な点が多い。我々は、本研究で、転写伸長因子の遺伝子制御機構と疾患発現との関連を明らかにすることを目的としている。今年度は、次の点を明らかにした。 (1)新規エロンガンファミリーA3を同定した。A3は、A及び我々が最近報告したA2に比べ、欠損領域が多いホモログであったが、リコンビナント蛋白質はin vitroで転写伸長活性を示した。 (2)A2が精巣特異的に発現されるのに対し、A3はA同様、組織非特異的に発現された。 (3)さらに、A、A2とのキメラ因子を作製して解析を進めている。 (4)ELLホモログの部分cDNAをESTから見い出し解析中である。 (5)転写伸長因子エロンガンAのノックアウトES細胞を作成した。この細胞は、野生株、ヘテロ株細胞が正常な増殖を示すのに比べ、著名な増殖低下と体積増加を示した。個体作成中である。
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