研究概要 |
LDH-1の割合が増加し、且つLDH-2とLDH-3の間に過剰バンドの認められる異常アイソザイムパターンを示した網膜芽細胞腫細胞株NCC-RbC-51(R51)を用い、その異常パターンの原因について解析した。 1)抗LDH-A抗体を用いたウェスタンブロツト法により、過剰バンドはLDH-Aサブユニットを有しており、SDS-PAGEにより正常のLDH-Aよりやや大きい分子量を有していた。 2)LDHA cDNAをプローブとしたノーザンブロツトの結果、正常よりわずかに高分子量の位置に薄いバンドを認めるのみで、RT-PCRでも正常のLDHA mRNAの発現はみられなかった。 3)LDHAプロモーター領域のメチル化状態を解析したところ、エクソンa付近は完全にメチル化されており、正常のLDHAの発現(タイプ1)を抑制していると考えられた。 4)マウスの精巣では発現が報告されているエクソン0を調べたところメチル化されておらず、RT-PCRによりエクソン0から始まる転写産物(タイプ2)が検出された。この転写産物は本来の翻訳開始地点とは異なった場所から翻訳され、29アミノ酸増えた翻訳産物が過剰バンド形成に関与していると考えられた。 5)タイプ2の転写産物は精巣で最も強く発現しており、種々の癌細胞でも発現していたことから、cancer-testis antigenと考えられた。 次に、12種類のがん細胞株・臨床材料におけるLDHA, LDHBのメチル化について検討したところ、LDHAのメチル化はいずれにも見られなかったが、LDH-Bの発現が消失していた5種の細胞株(6種中4種の胃がん、残る1種は膵がん)ではLDHBがメチル化していた。臨床材料では25例の大腸がんにはLDHBのメチル化は認められなかったが、20例の胃がんのうち3例で部分的なメチル化を認めた。LDHB遺伝子のメチル化は、今回の我々の報告が最初である。
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