研究概要 |
抗癌剤耐性に関連のある遺伝子として、ヒト骨肉腫細胞株より我々が単離した新規の癌抑制遺伝子RB1CC1(RB1-inducible Coiled-Coil 1; Human Gene Nomenclature Committee-approved gene symbol)は、ヒト各種組織におけ発現状態、機能、等、全く未知遺伝子でした。しかしながら、そ遺伝子クローニング、構造解析、染色体mapping(Chano, et al. Gene 2002)をはじめ、我々が行ったヒト各種組織、悪性腫瘍における発現解析実験、RB1CC1遺伝子導入による機能解析実験より、本遺伝子産物は哺乳動物細胞の核内で転写因子として働き、別の癌抑制遺伝子RB1(retinoblastoma tumor suppressor gene 1)の発現を上昇させることにより、がん細胞の増殖を抑えていることが明らかとなりました(Chano, et al. Oncogene 2002)。 更に、RB1CC1遺伝子座にLOH(loss of heterozygosity)の存在がみられた乳癌について、その遺伝子の変異、発現、機能解析を行いました。この結果、乳癌の10〜20%の症例において本遺伝子の遺伝子変異力が存在し、このことが乳癌の癌化に関わっていることが明らかとなりました(Chano, et al. Oncogene 2002)。この成果は2002年6〜7月にかけて日本のテレビ、新聞紙上で取り上げられました。また、海外でも特に高い評価を受けました。その後、RB1CC1は細胞の増殖を抑えるだけでなく、組織の発生、器官形成においても重要な働きをし、細胞の分化に貢献していることも示唆しました(Chano, et al. Am J Patho12002)。
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