抗癌剤耐性、薬物代謝に関連する新規遺伝子の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470520
• 研究機関: 滋賀医科大学
• 研究代表者: 岡部 英俊 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70079713)
• 研究分担者: 茶野 徳宏 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (40346028)
• キーワード: RB1CC1 / RB1 / 癌 / がん抑制遺伝子 / 遺伝子変異 / cloning / 組織、器官発生 / 分化

研究概要

抗癌剤耐性に関連のある遺伝子として、ヒト骨肉腫細胞より我々が単離した新規の癌抑制遺伝子RB1CC1 (RB1-inducible Coiled-Coil 1)は、ヒト各種組織における発現状態、機能、等、不明の新規の遺伝子でした。しかし、その後我々が行った、遺伝子クローニング、構造解析、染色体マッピング、更に、ヒト正常各種組織、悪性腫瘍における発現解析実験、RB1CC1遺伝子導入実験などにより、本遺伝子産物は哺乳動物細胞の核内に移行し、核内では転写因子として働きうることがわかりました。そして、RB1CC1が別の癌抑制因子RB1 (retinoblastoma tumor suppressor)の発現を上昇させ、RB1のリン酸化を調整することにより、癌細胞の増殖を抑える働きを持つことを明らかにしました。
RB1CC1遺伝子座にLOH (loss of heterozygosity)の存在がみられた乳癌については、その遺伝子変異の解析、発現解析を行いました。その結果、乳癌の10〜20%の症例において、本遺伝子機能の異常がみられ、このことが乳癌の癌化に関わっていることを明らかにしました。また、他の癌ではRB1CC1分子の上流の異常や、遺伝子のメチル化が癌化に関与している可能性も示しました。
癌以外には、RB1CC1が細胞の増殖抑制だけでなく、組織の分化、器官形成においても重要な働きをしていることを明らかにしました。
現在、RB1CC1の細胞生物学的経路を明らかにし、治療に役立ててゆくための解析を行うとともに、神経組織等で発現されているRB1CC1の働きを明らかにするための研究を継続して進行しています。

研究成果

• [文献書誌] Teramoto K, Chano T, Ozaki Y, et al.: "Expression of RB1CC1, a novel tumor suppressor gene, is inversely correlated with the Ki-67 proliferation index in primary breast cancers"Cancer Therapy. 1. 103-107 (2003)
• [文献書誌] Kontani K, Chano T, Ozaki Y, et al.: "RB1CC1 suppressers cell cycle progression through RB1 expression in human neoplastic cells"Int J Mol Med. 12. 767-769 (2003)
• [文献書誌] Serra M, Maurici D, Benini S, Shen JN, Chano T, et al.: "Analysis of dihydrofolate reductase and reduced folate carrier gene status in relation to methotrexate resistance in osteosarcoma cells."Ann Oncol.. 15. 151-160 (2003)
• [文献書誌] Ushiyama T, Chano T, Inoue K, Matsusue Y.: "Cytokine production in the infrapatellar fat pad : another source of cytokines in knee synovial fluids"Ann Rheum Dis. 62. 108-112 (2003)
• [文献書誌] Mori K, Chano T, Ikeda T, Ikegawa S, Matsusue Y, Okabe H, Saeki Y.: "Decrease in serum nucleotide pyrophosphatase activity in ankylosing spondylitis."Rheumatology (Oxford). 42. 62-65 (2003)
• [文献書誌] 茶野徳宏: "RB1遺伝子の発現調節因子RB1CC1と癌における変異"実験医学. 21. 721-725 (2003)