臨床検査医学における血管内皮機能評価法の確立

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470521
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 大島 哲也 広島大学, 医学部, 助教授 (40233100)
• 研究分担者: 小園 亮次 広島大学, 医学部・付属病院, 助手 (00304436) ; 神辺 眞之 広島大学, 医学部, 教授 (70034139)
• キーワード: 血管内皮 / 動脈硬化 / 反応性充血 / 一酸化窒素 / 血小板 / 高血圧 / 超音波 / 高脂血症

研究概要

1.血管内皮機能の評価は、従来より末梢血管の血流量を指標として用いるが、方法は施設により異なり統一されておらず、正常範囲も不明である。今回、血管内皮機能評価法を確立するため、内皮依存性血管拡張反応の方法を統一し、その基準値を明らかにし、各種疾患で検討した。
2.動脈硬化およびその危険因子を有さない健常者と動脈硬化性疾患を有する患者を対象に血管内皮機能を測定した。前腕血流量をプレシスモグラフィーで、前腕動脈径を超音波で測定し、虚血(280mmHg、5分間)後の反応性充血時の変化を内皮依存性血管拡張反応、ニトログリセリン吸入時の変化を内皮非依存性血管拡張反応と定義した。
3.健常者において、前腕動脈径の虚血後反応性充血時およびニトログリセリンに対する増加率は各々10〜15%の範囲であった。プレシスモグラフィーの反応性充血時の前腕血流量は40〜50ml/min/100ml組織であった。これらを基準値として設定した。連続測定間の変動、日差変動いずれも5%前後と比較的安定した再現性が得られた。
4.内皮依存性血管拡張反応は老人(65才以上)、冠動脈に有意狭窄のある症例、糖尿病において著明に低下していた。冠動脈疾患群では冠動脈のアセチルコリンに対する反応性と前腕動脈の内皮依存性拡張反応性の間に正相関のあることが示された。高血圧、高脂血症のみの患者では、前腕動脈の反応性は基準範囲内のことが多かった。
5.前腕の内皮依存性血管拡張反応は動脈硬化において障害されている。動脈硬化の危険因子としては加齢と糖尿病の関与が大であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Hiroshi Sugino: "Apotosis is not increased in myocardium overexpressing type 2 angiotensin II receptor in transgenic mice"Hypertension. 37. 1394-1398 (2001)
• [文献書誌] Yukiko Nakano: "Calorie restriction reduced blood pressure in obesity hypertensives by improvement of autonomic nerve activity and insulin sensitivity"Journal of Cardiovascular Pharmacology. 38. S69-S74 (2001)
• [文献書誌] Yukihito Higashi: "Sodium chloride loading does not alter endothelium-dependent vasodilation of forearm vasculature in patients with essential hypertension"Hypertension Research. 24. 711-716 (2001)
• [文献書誌] Yukihito Higashi: "Effect of obesity on endothelium-dependent nitric oxide-mediated vasodilation in normateusive individuals and patients with essential hypertension"American Journal of Hypertension. 14. 1038-1045 (2001)
• [文献書誌] Shota Sasaki: "Effects of angiotensin(1, 7)on forearm circulation in normotensive subjects and patients with essential hypertension"Hypertension. 38. 90-94 (2001)
• [文献書誌] Yukihito Higashi: "Effect of estrogen replacement therapy on endothelial function in periphefal resistance arteries in normotensive and hypertensive postmemo pausal women"Hypertension. 37. 651-657 (2001)