研究概要 |
工学関係の専門分野としては、世界史的には、civil engineeringとしていわゆる土木工学から制度化される。この発展の傾向は、日本においても工部省における「お雇い外国人」の大量雇用や、伊藤博文らの近代化路線によって,Scotlandのcivil engineerの来日によって特徴づけられる。しかし、その制度化は日本ではイギリスとは異なった。すなわち、工学会が一時的に組織されるが、その初期の中核的部分としての、土木工学分野の工学専門学会の組織は遅れた。これは日本の一つの特徴である。電気における専門工学教育は、はじめ電信分野から始まった。ここでは、高等レベルでの工学教育は初期には見られず、電気部門としては、帝国大学工科大学となって以後のいわゆる電力部門から始まったと見ることができる。機械工学分野では、さらに複雑な傾向を示す。ここでは、機械技術は、軽工業部門の作業機械以外に、造船や鉄道、そしてそれらの機関部門、さらには電気関連、建設関連などさまざまな部門に関与しているところから、それらの部門の、社会的経済的構造の展開過程と強く結びついて、工学研究の展開構造が見られる。この点でも、当然ながらイギリスでの、鉄道関係者を中心としての、1848年という、比較的早期でのInstitution of Mechanical Engineersの成立という構造とは異なった日本的な展開を見ることができる。さらに、造船を含めて見ると、幕末でのフランス技術教育方式からイギリス的な方式への転換という、国際的な変化の反映も見て取れる。このことが機械工学教育や研究の内容的な変化にも見て取ることができる。化学工学の展開も同じく特殊である。
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