研究概要 |
筋内の代謝性変化を感知する受容器は筋代謝受容器と呼ばれ、特に強い運動強度での運動時における心機能や血管調節に重要な役割を果たしていると考えられている。また、運動中の循環調節には、頸動脈にある動脈圧受容器、心臓や肺にある心肺圧受容器も重要な役割を果たすと考えられるが、それらの相互作用に関しては明らかではない。そこでそれらの相互作用を明らかにすることを課題として、安静時、筋の代謝性変化(筋代謝受容器反射)時、心肺圧受容器刺激時に、動脈圧受容器を刺激してそのときの循環系、自律神経系調節変化を検討した。主要な実験は以下の2つである。実験1)心肺圧受容器反射と頸動脈圧受容器反射の筋交感神経に対する動的応答特性に対する相互作用についての研究。実験2)筋代謝受容器反射と頸動脈圧受容器反射の筋交感神経活動発生確率に対する相互作用に関する研究。 実験1から、心肺圧受容器反射刺激時には、頸動脈圧受容器の脱負荷(低圧負荷)に対しては筋交感神経活動の反応が早まること、逆に負荷(高圧負荷)時にはその活動が抑制されることが明らかとなった。このことから、心肺圧受容器が働くような立位運動時には、上記のメカニズムが働くことによって、血圧が高い値に維持されることが示唆された。実験2から、筋代謝受容器反射刺激時には、頸動脈圧受容器反射による筋交感神経活動発生の確率が増加することが明らかとなった。このこともまた、筋代謝受容器反射が働くような高強度運動時における血圧上昇やホルモン調節のメカニズムとして働いていうことが示唆された。 上記の内容は、国際的にも高く評価されて生理学のトップジャーナル(J.Physiol.印刷中,2004.,Am J Physiol, Heart Circ Physiol.286:H701-707.2004)にそれぞれ掲載された。
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