研究概要 |
本年度は4カ年計画の研究の初年度であり,当初からの研究計画に従って,山田は北海道の,金坂は中部地方の,天野は中国・四国地方の諸都市の近代都市図のリスト作成と,各地方における近代都市図の特質の解明に当たった。また小方は戦前期の日本で撮影された空中写真についての研究に着手した。加えて金坂は,前近代の日本の都市図についての研究をも行い,それらから近代の図への連続・不連続の問題にもアプローチしつつある。 山田の担当した北海道については,すでに本研究開始前から種々の機会に調査を行っていたこともあり,比較的順調に作業が進展した。北海道立図書館・北海道大学附属図書館・札幌市立中央図書館・市立函館図書館・旭川市立図書館・市立小樽図書館・釧路市立図書館・帯広市立図書館など,北海道内の主要図書館,それに国立国会図書館において,近代の北海道の大縮尺都市図の収蔵状況を調査済みである。この一連の作業の中で,北海道の複数の都市において,すでに1920〜30年代から住宅地図が作成されていた事実が明らかとなった。住民の変動の激しい新開地都市における需要の多さを示すものであろうか。 金坂の担当した中部,天野の担当した中四国については,対象都市数の多さもあって,近代都市図の所蔵状況に関する調査は未完了であるが,少なくとも地元の公共図書館での所蔵状況に関していうと,北海道の図書館ほどには多くの大縮尺都市図を所蔵していないケースが多いようである。しかし,そのことは,これらの地方においてあまり多くの地図が作成されなかったことを意味するのではなく,近代都市図のもつ資料価値の相対的差異(古い歴史をもつ都市では,近世以前の都市図と比べて近代以後の図は軽視されがちである)によるものと考えるべきであろう。
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