研究概要 |
4年間の研究期間の最終年度である今年度は,前3年度において近代都市図の所蔵調査が不十分であった中部地方と近畿地方の県立図書館を中心として,近代都市図の所蔵状況に関する調査を行った。その結果,岐阜県立図書館に,おそらく全国の公共図書館(に限らずすべての関係機関)の中で最も大量の近代都市図が所蔵されており,かつ今後もその数が増加する見通しであることを知り得た。そのこと自体は収穫というべきであるが,遺憾ながらこのコレクションにじかに接することのできたのが研究期間の最末期(2004年12月)になってしまったため,ここの近代都市図をフルに利用して研究を深めるには至らなかった。また,全国の都道府県立図書館すべてにおいて近代都市図の所蔵調査を行うことを計画していたにもかかわらず,ごく一部ではあるが,そのことを果たせなかった図書館が残ってしまったのも反省点である。 その一方で,今年度はこれまでに所蔵状況を確認し,かつ実物を閲覧した近代都市図の内のいくつかを,当該都市の歴史地理的な復原研究などに利用するという,いわば本研究課題の目的から一歩先に進んだ研究をも行った。とくにわれわれの勤務先の所在地で,従来からもいろいろな機会に研究対象としてきた京都に関して,その歴史地理的研究にさまざまな形で近代都市図を利用した研究の成果をいくつか公表することができた。山田による琵琶湖疏水研究,概報ではあるが近代京都の地価研究,金坂による近世京都の遊覧コースの復原研究などが,その例としてあげられる。
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