研究概要 |
本年は,3年計画の初年度として,(1)加速器質量分析による高精度14C年代測定の準備,(2)効率のよい試料処理方法の検討,(3)中国白頭山火山の10世紀頃の噴火に関連する火山性堆積物の調査と埋没樹木の採取,(4)測定された14C年代から較正年代を得る方法,年輪の14Cデータを解析するウイグル・マッチング法の検討を実施した. 当センターに設置されているタンデトロン加速器質量分析装置を用いて,標準体,ブランク試料,樹木年輪試料について,測定時間,測定回数,生データの処理方法に関する検討を行った.その結果,現代から5千年前までの試料について,測定誤差±20〜±40年,正確度±40年で年代測定を実施できる見通をつけた.また,購入した備品(ターボ分子真空ポンプ,凍結乾燥機)を用いて,樹木年輪や泥炭など火山噴火に関連する試料処理の装置を組み立てると共に試料処理プロセスの検討を行い,樹木,泥炭,骨片試料の効率のよい処理方法を検討した.8月に,外国出張旅費を用いて中国白頭山火山を調査し,10世紀頃の巨大噴火に関連する樹木試料の採取を行った.この噴火に関連したB-Tmテフラは,日本の東北,北海道周辺に広く分布しており,ほぼ同時期に十和田火山から噴出された十和田a(To-a)テフラとあわせて,火山灰対比による考古学遺跡などの年代推定に盛んに利用されており,B-Tmテフラの正確な年代決定が期待されている.白頭山周辺から数個の埋没樹木を採取し持ち帰った.この樹木年輪の14C年代測定を目下進めている.さらに,これまでに当センターで測定した樹木年輪についての既存のデータと14C年代-年輪年代を関係つけるデータとして世界的な評価を得て使用されているINTCAL98(Stuiver et al., 1998)を用いて14Cウイグル・マッチングの解析手法の検討を進めている.
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