研究概要 |
本年度は研究の最後のまとめの年であり、昨年のヨーロッパに続いてアメリカの夜間保育施設の実態を追究することを目標に研究計画をたてた。アメリカの母親の就業率は高く、大多数の母親にとって勤務時間帯の保育確保は切実な問題となっていた。乳幼児期の子育ては母親がするのが望ましい、子どもの養育は親の権利であるといった伝統的価値観や、公的財源による保育は低所得層に限定すべきであるという考え方に阻まれて、公的保育施設は限定された範囲でしか提供されていない。営利・非営利の保育サービス、私的保育に頼らざるを得ない現状があった。 アメリカでは子どもの生活のあり方よりも就学前教育が重視されており、例外的にみられた2件の夜間保育所の他に調査した4件の昼間保育所でも同様であった。施設平面図の採取と施設長へのインタビュー結果をもとに保育環境整備に向けて学ぶべき点を究明した。夜間保育所は1993年にサンフランシスコ国際空港関係者の家族と近隣地域の人々のために設立された非営利の民間組織Palcareと、3シフト制の企業内保育所Toyota Motor Manufacturing, Kentuckyである。3シフトの保育では教育プログラムが時間帯にかかわらず同じ内容で実施されていた。また、様々な意味で、子どもの安全対策がハード・ソフト両面から実施されていた。園庭のあり方にもそうした考え方が反映されていた。大型遊具中心の園庭を年齢別に柵で区切っているのが特徴的である。さらに昼間・夜間保育を問わず環境保育が浸透しており、施設は小空間構成で様々な機能をもっコーナーがつくられていた。昼間の就寝のための専用空間はなく、コットで自由に寝るシステムがとられ、夜間の就寝については学齢以上は男女別の空間がとられていた。食事用の空間としては3歳以下では専用のコーナーが、それ以上では専用コーナーや食堂が用意されていた。 また、Family Child Care 8件を訪問し、個人住宅の保育空間の実態と使われ方を把握した。いわゆる保育ママと呼ばれでいる制度で、ライセンスを取得すれば個人住宅で14人の子どもを保育することが認められている。講習を受け、家の広さなど州の安全基準を満足する必要がある。
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