研究概要 |
香辛料をスープなどに加えると特有の香りが付与されるが、その際、その香りは香辛料そのものとは異なる場合が多い。この要因として、加熱調理中に香気成分の変化がおこる、他の食材の香気成分との相互作用による組成の変化などが考えられる。本年度は、まず、タイ料理で汎用される香辛料であるコブミカンに着目した。コブミカンは独特のシトラス系の香りを持っている香辛料で主として生葉がスープやカレーに使われる。しかし、加熱するとその香りの質がかなり異なってくる。本研究では、まず官能検査、GC-およびGC-MS分析、GC-Sniffing分析を組み合わせ生葉の香気特性に主として寄与する香気成分の特定ならびに立体は位置を含めた詳細な構造決定を行い、さらに、煮熟による香気特性および成分組成の変化を分析した。また、それぞれの香気濃縮物について抗菌活性と血小板凝集阻害活性について検討した。その結果、Citronellal、Citronellol、Linalool、Geraniol、Nerolidolなどが主要香気成分であった。煮熟すると、Citronellalが減少し、新たにcis-およびtrans-P-Menthane-3, 8-diolの生成が認められ、Citronellic acidの顕著な増加が認められた。これらの化合物は、酸性条件下でCitronellalより生成されることは報告されていたが、本研究において、加熱によっても生成されることがはじめて明らかとなった。しかし、p-Menthane-3, 8-diol、Citronellic acidいずれもにおいは弱く、官能検査の結果より、Citronellalの減少が香気変化の主要要因であることが示された。香気成分の生理活性を調べた結果、生葉、煮熟葉いずれの場合も非常に弱いが活性が認められ、煮熟葉の方が強い傾向が認められた。 また、豚肉脂身、牛肉脂身、コーン油を150℃まで加熱した際に生成されるGCでは分析不可能な低沸点アルデヒド類について、DNPH誘導体にし、HPLCで定量するアッセイ系の構築を行った。 購入したオートインジェクターにより、再現性、効率性に優れた分析系が構築された。本系により香辛料添加によるアルデヒド生成への影響についてデータ集積を進めている。
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