研究概要 |
香辛料を加熱調理に用いた時の香気成分の動態について昨年に引き続き研究を行った。山椒は主に中国、韓国、日本など東アジアで香辛料として利用されている。まず、産地による香気成分の比較を行った。その結果、中国産にはCitronellalが含まれず、韓国産はCitronellal含量が非常に高く、日本産は産地により多少の違いはあるがほぼ両者の中間の香気組成であることがわかり、学会誌に報告した。日本では未熟の実も青山椒として魚などと一緒に煮て臭みを抑えるのに利用する。そこで山椒果実を煮熟したところ、Citronellalが大幅に減少し、cisおよびtrans-p-menthane-3,8-diolの顕著な生成が認められた。他の成分にはほとんど変化がなかったが、山椒のさわやかな特徴香は弱くなった。これは昨年、コブミカンの葉を煮熟した場合と同様の傾向であった。そこで、昨年度のCitronellalからp-menthane-3,8-diolが生成する条件検討に引き続き、今年度さらにモデル系により詳細な検討を行った。その結果、脱気したのち密封し、閉鎖系の状態でCitronellal水溶液を加熱すると60分後でも、p-menthane-3,8-diolは全く生成されず、citronellalの約20%が分解し、isopulegolが生成することが確認された。すなわち、.空気のない状態にすれば加熱加工においてcitronellalの分解を抑制できることが明らかとなった。 昨年に引き続き、油脂加熱におけるアルデヒド類、とくに毒性の強いアクロレインの生成と、その抑制に関与する香辛料の検索を行った。その結果、一価の不飽和脂肪酸を多く含む油にアクロレインの生成量が多い傾向が認められた。またその生成を抑制する香辛料のスクリーニングを行ったところ、数種の香辛料が抽出された。現在その成分について検索中である。
|