本年度は昨年度に行った教材の開発ならびに数感覚についての実態調査をもとに次のことを行った。 ・数感覚に関する日本の研究ならびに実践のレビュー 数感覚について日本国内で発表された研究ならびに実践を収集し、その研究の整理を行った。 収集された研究は理論ならびに調査研究13件、実践研究80件であった。まず、この動向から日本においては理論研究や調査研究が数感覚の育成に関して不足していることが指摘できた。また、結果として、日本の数感覚の研究が量感覚の育成と結びついていること、計算指導との結びつきが希薄であること、数感覚の発達に関する組織的な研究が不足していることなどを同定した。 さらに、指導への示唆として、現在の低学年中心の実践から高学年へ広げていくこと、数感覚の多面的な側面への着目を進めること、教材教具の実践的な活用を進めることなどが同定された。 この成果を日本数学教育学会第36回論文発表会で発表した。 ・国際比較研究への準備 数感覚の育成が「隠れた学力」の調査対象となりうることから、新しい見地として数感覚の実態を調べることによるカリキュラム研究の可能性があることが判明した。そのため、銀島が数感覚研究の第一人者であるミズーリ大学コロンビア校のレイズ教授を訪問し、国際比較研究を準備を行った。 ・数感覚の育成のモデル授業のビデオ開発(NHK教育での放映) 研究協力者である清水智子は数感覚育成の授業モデルを開発した。それら日本放送協会教育放送で注目され「わくわく授業-私の教え方-」として全国放送された。さらにこの番組はビデオでも頒布されることとなった。本研究の非常に大きい成果である。
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