本研究は、昭和10年代、国民学校期の音楽教育の実践史において、学習者の視点を取り入れた研究の可能性を探り、子ども・教師・制度という三つの視点から国民学校期の音楽教育を総合的にとらえようとするものである。 平成14年度までに、農村部の一事例として長野県上伊那郡高遠町の高遠国民学校および、都市部の事例として東京文京区の誠之小学校(誠之国民学校)を対象に調査をすすめてきた。本年度は、これまでに調査・収集してきた各学校所蔵文書資料、卒業生へのアンケート調査、インタビュー調査の結果を整理・分析し考察を加え、学会誌論文をまとめるというまとめの年度とした。アンケートおよびインタビュー調査のデータの取扱いと公表に関しては、個人が特定されないようすべて匿名とし、調査対象者のプライバシー保護に十分配慮した。 随時、研究会を開催し、これまでに出揃ったデータを総合的にどのように読み取っていくか、そして国民学校期の音楽教育の実践史をどうとらえていくか、議論を深め、特に誠之国民学校の音楽実践について、「学校日誌」や「備品簿」、「学籍簿」等に見ることのできる、当時の音楽教育の諸状況や、音楽教師の活動についてまとめた論文を日本音楽教育学会の学会誌『音楽教育学』に投稿、受理され、12月に掲載された。1月には補遺調査として、誠之卒業生へのインタビュー調査を実施。研究分担者、研究協力者がそれぞれの視点から報告書の原稿をまとめ、3月に研究成果報告書を完成させ各所へ発送した。
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