研究課題
基盤研究(B)
現行学習指導要領におけるクラブ活動の廃止、学校と地域の連携、教育の市場化といった教育改革のなかで、中学校や高校では、部活動を縮小・廃止したり、地域と連携/委譲を図ったりする動きがみられる。このことが、教師による生徒指導や進路指導、生徒の学校への関わり方や進路選択のありようといった学校のその他の教育活動場面や、生徒のスポーツ・文化活動への参入機会にどのような変化をもたらすかを明らかにすることが本研究の目的である。そのために、東京都、静岡県、新潟県を中心に、中学生、高校生を対象とする質問紙調査、並びに部活動改革に取り組む中学校における観察・インタビュー調査を行ってきた。これらの調査によって得られた主な知見は以下のとおりである。部活動に対する生徒のかまえには活動本意の志向性と人間関係本意の志向性がある。活動本意志向の生徒にとって部活動改革は望ましいが、人間関係本意志向の生徒にとっては、学校で行われる部活動でしか享受され得ない人間関係形成の場を失うことになる。学業だけではないさまざまな場面が学校には準備されていることは、学業に興味のない子どもたちにも学校に対する前向きなかまえをもたせるように働いており、部活動に積極的に関わることが学業成績や将来展望にプラスの影響を及ぼしている。部活動が、ジェンダー・サブカルチャー形成の場として機能している。スポーツ・文化活動への参入機会には、出身家庭の文化的経済的状況や地域性によって差があるが、その格差は、学校で部活動が組織されていることによって縮減されている。部活動の地域との連携や移行という取り組みは、第一に、指導者の外部化によって活動が競技志向に傾くと同時に、顧問教師の関与が下がるため、生徒指導の機会が縮小する。第二に、かえって地域社会や保護者の学校への期待が明確化し、その役割や責任が強調されるという矛盾した結果を生み出している。
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