研究概要 |
平成15年度は、平成13年度14年度の研究成果に基づき,<学習場面臨床学>及び<学習臨床カウンセリング>の,(1)相互的な関係構造と学びの過程,(2)両者の連携的視点にたつ子どもの学びの過程の臨床的開発,(3)子どもの学びの過程に対応する「基礎・基本」としての<学習過程臨床カリキュラム>の全体構造の3点について,研究協力校との連携による臨床的開発と検証を進め,本研究のまとめとした。 その結果,子どもたちは生きることと学ぶことが一体化した身体的な活動を,ものや人との<あいだ>で共に相互に感じ合い生き合う相互作用・相互行為の過程で,自己の<個別の生>と他者と<共有する生>とを,身体の根底で感じながら生き,同時に,記号や道具に媒介された新たな身体的実践を,もの,できごと,他者との<あいだ>に創発的に行って,それまでの自己の社会的文化的実践を新たな関係的行為としてつくり変え,ものや他者と新たな関係性にある<できごと世界>を生成して生きている。子どもの身体性ともの,こと,人との相互作用・相互行為によりつくられる<できごと世界>の生成としての学びの過程においては,「基礎・基本」としての知識・技術は,子どもたちによりつくられ生きられる共同的で個別的な主体性として現れて働いており,そうした他者性をもつ働きとの<あいだ>で,子どもの自己性と<知>,他者と共に生きる社会的文化的関係性が,生きて働く行為としてかたちづくられていく。子どもの学びの過程に対応する「基礎・基本」カリキュラム(<学習過程臨床カリキュラム>)は,単に知識と技術の体系的で順次的な配列ではなく,子どもが,もの,こと,人と共に,それらとの相互作用・相互行為の過程で,感じ,考え,行うことを一体化して働かせる過程を通してつくられる関係的実践,関係的状況をいう。そうした関係的な実践過程において,子どもと教師は,<学ぶ(教える)←→教える(学ぶ)>という相互的実践関係をつくることにより,学びの実践と,教育の実践とを関係的・協同的につくりだし,学びの過程に対応するカリキュラムを総合的に成りたたせていくことを結論づけた。
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