この研究は、日米の大学の研究者と高等学校の地理教員が協力して問題解決能力の育成のための教材を開発し、評価方法を開発して、その成果を測定することを目的としている。今年度、日本側では、先行研究や昨年度以前の研究成果を基に問題解決能力の概念を共通理解するとともに、昨年度の実験授業の資料を分析して日本の生徒の問題解決能力の弱点を明らかにした。その結果、多くの生徒に共通する問題として、問題がおこっている場所を特定する、地域によって同じ問題でも原因や現れ方が異なることを理解するなど基本的な地理的見方が身についていないこと、自分の力で資料を見つける能力が弱いこと、資料の出典を明示する習慣が身についていないことなどが明らかになった。並行して、教材開発を行い、2002年3月のアメリカの高等学校教員の来日時に開発した教材の一部による授業を実践した。更に、アメリカ側の教員も、開発した教材による授業を日本人の生徒に対して行った。日本側で開発した教材は、「人間貧困指数から世界の貧困問題を考える(3時間)」、「発展途上国の都市問題(2時間)」及び「牛肉と豚肉(1時間)」であった。アメリカの教員によって開発され、日本で実践された授業は、「Building new school : A Geography lesson in locational analysis」であった。授業観察に基づき、双方で意見交換を行い、教材開発と評価方法の開発に関する方針を立案した。日本人の生徒は、シャイで積極的に発言することは稀だが、授業には積極的に参加しており、発言するときはよく考えをまとめてから発言するなどの印象上の特徴が指摘されたが、それをどのように客観的に比較していくかが課題である。
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