研究概要 |
今年度は,非構造格子上の代数的マルチグリッド法,及びその並列実装技術に関して以下の成果を得た. 1.非構造格子上のマルチグリッドアルゴリズム マルチグリッド法は,異方性問題において収束が劣化するため,semi-coarseningや線緩和法などの手法が提案されている.そこで,非構造格子上において異方性を考慮した幾何的マルチグリッド法を実装し,代数的マルチグリッド法と数値的に比較した結果,後者に関してより良好な結果を得た.代数的マルチグリッド法と数値的に比較した結果,後者に関してより良好な結果を得た.代数的マルチグリッド法は異方性による影響を受けにくく,ロバストな反復解法になり得るものと期待される.今年度においては,偏微分方程式を離散化して得られる疎行列方程式について代数的手法の一種である不完全LUマルチグリッド法を実装し,性能を評価するとともに,独立点集合としてfine nodeを選ぶ際にグリッドが密な場合にも効率よくノードを減らすためのcoarsening手法を提案し,複数のメッシュで離散化したPoisson方程式に関して有効性を実証した. 2.分散共有メモリアーキテクチャ上への効率的な並列実装手法 これらの研究と平行して,計算環境の構築,及び基本的な行列演算ライブラリの並列実装と評価を行った.Intel社のItaniumプロセッサを用いた分散共有メモリ型計算機として4セル8プロセッサ構成のNEC AzusAを選定し,オペレーティングシステムとしてLinuxを利用した計算環境を構築した.予備的な評価ではカーネルのスケジューリング方式によって計算性能が大きく異なっており,分散共有メモリアーキテクチャ上への効率的な実装技術について引き続き研究を進める必要がある.また,既存設備のSun Microsystems社製Enterprise 10000を用い,BLASレベルでの効率的な並列化により,Level 1, 2についても十分なスケーラビリティが得られることを示した.
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