研究概要 |
アスペクトとは自然言語の動詞の活用の上で進行形や完了形などの概念であり,動詞で述べられる動作がどのような局面にあるかを述べるものである.アスペクトは未来や過去を表すテンスとともに,言語上の時間的性質を述べるものである.テンスの概念を抽象化した時相論理(temporal logic)は様相論理の一発展形として盛んに研究されているが,アスペクトの概念を様相として論理を構築した研究例は少ない.本研究での目標の一つはアスペクト論理の完成であるが,その途上として,本年は現在のアスペクト分類を実際に自然言語のテキストに応用して時間的描写の精度を向上させるシステムを開発した.本研究では料理のレシピ文をターゲットとした.レシピ文は複数動作の同時進行や各動作の起点・終点を正確に伝える必要がある.したがってレシピ文のテキストを入力とし,各々の動作の時間関係を描写するタイムマップを作成することは,文章の正しい理解度を測る上で有意義である.この研究では通常のアスペクト分類を拡張し,さまざまな完了の概念を導入することで視覚的にわかりやすいウェブ形式によるタイムマップを生成することに成功した.来年度以降は,このアスペクトのシステムを様相論理として形式化する予定である.さらに,複数のエージェントがそれぞれの知識を有し,時間の推移にしたがって知識も変化するような体系で,あるエージェントがある時点である命題を知識として持っているかどうかを判別するための証明手続きを完成した.その他,前年度より手がけていた複数の否定(強い否定,古典的否定,対立概念)を含むオーダーソート論理を完成し,論文発表を行った.来年・再来年においてはこのオーダーソート論理に上記アスペクト論理を組み込むことを研究の目標とする.
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