研究概要 |
これまでの論理学の否定とは一種類の連結子(〓)であったが,本研究では,暗黙に否定の意味が内在するソートを含んだソート階層と知識ベースとの結合を強化した推論機構を提案した.ここでは,異なる否定間での推論を実現するために,否定間の関係をソート階層で互いに関係づけ,肯定表現と排他性および全域性などを明確にし,その結果,拡張したソート表現に関する導出処理を提供することができた. また,時間の論理の組み込みを行った.テンスの概念を抽象化した時相論理(temporal logic)は様相論理の一発展形として盛んに研究されているが,アスペクトの概念を様相として論理を構築した研究例は少ない.本研究での目標の一つはアスペクト論理の完成であるが,その途上として,本年は現在のアスペクト分類を実際に自然言語のテキストに応用して時間的描写の精度を向上させるシステムを開発した.この研究では通常のアスペクト分類を拡張し,さまざまな完了の概念を導入することで視覚的にわかりやすいウェブ形式によるタイムマップを生成することに成功した. 時間と否定の論理を組み込んだソート階層が実用に供する可能性のある知識ベースとして働くために,次のような現実上の問題を考慮した.まず第一に,知識ベースはそもそも分散して存在するために,どの知識ベースからどの知識ベースがアクセスできるかの制限がある.これはそのまま可能世界のアクセス関係として考えることができるために,われわれはソート論理を組み込んだ様相論理を提案し,その枠組みの中でオントロジーに関する理論を構築した.第二に,こうした分散知識ベースにおいては,同一概念が異なる名前で呼ばれている可能性がある.われわれは概念の同一性を検証するために各概念に固有の同一性条件(identity condition)なる関数に着目し,それら関数が同一の値を取ることで概念の同一性を発見するメカニズムを提案した.
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