研究概要 |
本研究は,計算機上に構築された仮想心理実験室を実験環境に用いて,人間の発見過程に関する実証的な検討を行なう。本年度は,まず,すでに先行研究において完成されていた認知シミュレータに簡便に操作可能なグラフィカルインタフェースを装備することによって,仮想心理実験室を実現した。 問題解決者は,必ずしも,完全な研究計画を立案した後に実験を行うわけではない。不完全な作業仮説から始まり,実験結果のフィードバックを受けながら,いくつかの実験計画が系時的につながり,それらが組織化されて,全体としての一つの研究計画が構成される。とりわけ,研究対象が複雑な場合には,この傾向が強くなる。報告者らは,そのような状況下での実験をデザインするための探索的実験記述スキーマを提案した。 次に,心理学を専攻しない一般大学生を対象に本実験環境を用いた実験を実施し,実験計画の推移パターンがどのように合理的に組織化されるのかを観察し,その特徴を同定した。さらに,学習が進むにつれて,そのパターンがどのように変化するのかを明らかにした(実験1)。 さらに,心理学の大学教員に対して同様の実験を実施し,心理実験のエキスパートの実験プロセスがどのように展開するのかを観察した(実験2)。それを,実験1で明らかになった一般大学生の実験プロセスと比較し,初心者とエキスパートの行動の差異を検出し,そこよりエキスパートが獲得している知識に関する検討を行なった。
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