研究概要 |
社会システムや産業活動などに関係して現れる生産計画,環境計画、最適配送計画,スケジューリング、最適投資などを始めとする重要な問題の多くは,大規模かつ離散構造を有するシステムの最適化問題として捉えられる.本研究では,離散最適化問題の有用な構造的性質の抽出,及び,その性質に基づいた高速アルゴリズム開発に主眼を置き,最適化分野における基礎理論の構築を試みる. 本年度の成果として,以下の3つが挙げられる. 1.離散最適化分野で基礎的かつ重要な劣モジュラ関数最小化問題に対して,多項式時間降下法を提案した.より正確には,劣モジュラ関数f:2^v→Kに関連する基多面体B(f)のメンバシップオラクルを0(|V|^2)回用いることによって,劣モジュラ関数fを最小化する降下アルゴリズムを開発した. 2.多面体の支持関数の劣モジュラ性と,多面体の同時交換可能性が等価であることを示した.マトロイド等の組合せ構造が持つ同時交換可能性は,貪欲算法の適用可能性と表裏の関係にあり,離散版の凸性とみなされている.本研究では、0,1-ベクトルのみを法線ベクトルとして持つ多面体に関して知られている等価性を,不均衡な同時交換可能性という概念を導入することによって,より一般的な多面体に拡張した. 3.単調線形システムの全ての極小な整数解を列挙する問題について考察した.この問題は,学習理論,データマイニング等様々な分野に現れる問題と多項式時間還元可能であることが知られている.本研究では,r個の線形不等式からなるどんなr変数単調線形システムにおいても,極大な実行不可能整数解の数が,極小な実行可能整数回の数の高々rn倍であることを示した.このことを利用して,単調線形システムにおけるすべての極小な整数解が逐次擬多項式時間で列挙可能であることを示した.
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