研究概要 |
大規模かつ離散構造を有するシステムの最適化問題に対して,その劣モジュラ的構造に注目し,有用な構造的性質の抽出,および,その性質に基づいた高速アルゴリズムの開発を行ない,基礎理論の構築を試みた.今年度の主要な成果は,以下の通りである. 1.経済学における祖代替性と離散凹性の等価性を明らかにし,離散凹効用関数を用いてGale-Shapleyの安定マッチングの概念を拡張し,その安定解の存在を構成的に示した。 2.劣モジュラ構造の基本である基多面体の概念を一般化した複基多面体の概念を創出し,劣モジュラ構造の新しい枠組みを提示した. 3.極大頻出集合の列挙が計算量的に難しいこと,ならびに,極小非頻出集合列挙が多項式時間で可能であることを示した. 4.ホーン理論とqホーン理論に対する関数従属性が効率よく求められることを示した. 5.単調論理関数の非双対性判定がo(log n)の推定ビットで可能であることを示した.また,様々な部分クラスの双対化問題を多項式時間で解くことが可能であることを示した. 6.データ解析手法として,データの本質を表す属性集合を求めるアルゴリズムを提案した.また,不完全なデータを説明する問題への拡張に対して,不完全性の度合いを考慮した4つの拡張を提案し,構造的性質,ならびに,計算量的性質を明らかにした.
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