研究概要 |
本研究では技能を人間の暗黙知,五感,身体動作,使用する道具・機械,および対象としての材料・作品・製品の5つの基本要素で表現する.そして,人間の五感(視覚,触覚,聴覚,臭覚,味覚)と,身体動作,道具・機械,材料・作品・製品との関係から暗黙知が増加することにより技能の習得がなされるものとモデル化する.本年度は,デジタル計測技術を用いて材料・作品・製品の仕様の決定と設計図化,および道具・機械,身体動作の三次元空間での動き(軌跡,方向,速度)の表現法の開発を行った.研究内容を以下に示す. (1)材料・作品・製品の仕様の決定と設計図化.作品の特性を分析するためにレーザ距離センサーを用いた3次元形状測定器を開発した.この装置を用いて作品の基準となる点および線を見出す.そして,主要部分の寸法を測定する.さらに作品の3次元形状を近似するための多項式を求めることにより,作品の設計図面を作成する手法を開発した. (2)道具・機械,身体動作の三次元空間での動き(軌跡,方向,速度)の表現法の開発.技能者の動作を分析するために3次元磁気センサー,オプティカルフロー,筋電センサーから構成される動作分析装置を開発した.3次元磁気センサーは7つの磁気センサーを技能者に取り付け,作品製作過程での姿勢,工具と面との角度.工具の進行方向を計測できる.オプティカルフローは工具の速度および進行方向を計測できる.筋電センサーは工具を使用する際の利き腕の前腕および上腕の力加減を筋電位により計測できる. 以上の手法および装置を用いて岡山県の伝統工芸品備中神楽面の面打ち師の技能を分析した.この分析により,神楽面の設計図化,および面打ち師の彫刻刀の動かし方(方向と速度)と身体動作の三次元空間での動きを明らかにした.さらに,未経験者の動作と比較することにより,短期間での技能の習得プログラムの開発について考察した.
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